ぴえぶろの100冊・1

細雪(上) (新潮文庫)

細雪(上) (新潮文庫)

気まぐれにはじまりました。100冊いくようがんばります。まずは一年に一度は読み返したくなる「細雪」。鶴子、幸子、雪子、妙子という船場の没落貴族傾向な蒔岡4姉妹。「とうのたってしまった雪子がお見合いをしてはなかなか嫁がない話」と荒めに言えばそんな話。「だからどうした」と言ってしまえばそれだけなのに3巻に渡って実に濃密に描かれているだけでも可笑しい。メッセージ性の強いもの、起承転結がありすぎるものが苦手な私にとって、狭い世界を淡々と細々と描写してくれるだけでも有難い。小説、作り話はかくあって欲しいと思う。初見の時は「私、雪子に似てる」と思ってしまい、母親に思い切り首をひねられた(笑)。何度も何度も読み返してるうちに妙子にもなり、幸子にもなり、鶴子の気持ちもわかるようになってきた。最後に読んだときは自分は悦子だと思った。貞之助含め、よくぞこういうどこかに居そうと思えかつ幻想的な人物を生んでくれたと思う。全体的に見栄にこだわってるところ、人のいい感じ、のんびり具合はかなり名古屋的。東京に生まれてたらきっと面白く読めなかったと思う。この小説は戦中時に絢爛すぎるということで打ち切りにさせられている。終わりになだれ込むあたりのせわしない感じ、切ない感じ、雪子の最後の方の描写、最後の文もなぜか好きだ。あと新潮文庫の表紙は出来がいいと思うけど、とくに谷崎のは大好き。この赤を見るたびにドキドキする。